ひょうたん窯陶芸体験のコンセプト

ひょうたん窯の陶芸体験のコンセプトは、窯主である私の過去の経験を原点に形成されています。
私がやきものを志すよりも昔、たぬきで有名な某有名陶産地に行った時の事です。
旅の記念に陶芸体験でもするべと思い立ち、持っていたガイドブックに載っていた窯元にて体験をさせていただく事になりました。
行った先は仕事場感ありありのまさしく窯元でした。
ごみごみした作業場の片隅にある体験スペース?に案内され、「ハイ」と1㎏ぐらいの粘土を渡されました。
それきりなんの指導もなく、仕方ないので完全自己流で湯飲み作りに挑みました。
私が若い女性とかだったら手取り足取り熱血指導して貰えたのかもしれませんが・・・。
一ヶ月後に送られてきた作品の結果は、漬け物石の代用に出来るような重い湯飲みでした。
そういえば釉薬も選べなかったなあ・・・。もちろんその湯飲みは既に手元にありません。
使えないものはいずれ捨てられる運命にありますからね。
作っているときは確かに面白かったです。
でも、出来上がったものがあまり良くないものだと、作った楽しい思い出も苦いものになるんですよね、残念ながら。

以上の私の経験から、ひょうたん窯の陶芸体験はできあがりの質を追及しています。
かといってあまりお手伝いしすぎると、お客様の作品ではなく私の作品になってしまいます。
ですからひょうたん窯では初心者の方でも作りやすく分かり易い制作方法を常に追及しています。
さらに実用陶器製造を生業とする視点から、使い勝手なども積極的にアドバイスしています。
具体的には取っ手の形、縁の形状、収納性、色の相性等々・・・ 言うべきことは多岐にわたります。

問題が有り修正すべきお客様の作品があった場合は、ひょうたん窯ではそのように率直に指摘させていただいています。猫なで声で「わぁ~いい出来ですねぇ~」とか「素晴らしいですねぇ~」と言う方が余程楽ですし、空気を悪くすることもないというのは理解していますが、そのような安直な体験では昔の私の二の舞になってしまいますからね。「良薬は口に苦し」という言葉もあります。作品がお客様のお手元に届いた時、使っていただいた時に喜びと満足が感じられるのであれば、作った時の苦労の記憶も良い思い出に変わるとひょうたん窯では信じています。

ビジネスとして陶芸体験をするんだったら、アルバイト動員前提で工房を大きくして、体験時間を少なくして、あらゆる広告媒体にお金をかけまくって、お客さんをどんどん回していけばがっぽりなんでしょうけど、当然出来上がるお客様の作品の質は落ちてしまいます。効率最優先のベルトコンベアー的なシステムで安易に出来上がった粗製乱造のやきものを送りつけられたお客様が、やきものを好きになるとは到底思えません。やきもので生計を立てる一人としてこんな方針は取れませんですよ、正直ね。
作って楽しく、使って楽しいやきもの作り。こういった陶芸体験を提供できれば良いなあ・・・ 今もなお追い続ける、ひょうたん窯の永遠のテーマです。